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「改革」のための医療経済学「改革」のための医療経済学
兪 炳匡
メディカ出版 刊
発売日 2006-07


「抜本的改革を急ぐと執行コストが高くなる」、「信頼性の低い政策研究・提言をもとに、見切り発車的に抜本改革をただちに開始して実施後は十分な評価をせず、数年周期で方向感覚を失った抜本改革を繰り返す」。。。日本の年金、医療、介護、障害者福祉の最近を動きを見ると誠に当を得た指摘です。大いに共感しながら、本を読み進めましたが、どうも違和感がぬぐえません。それは、著者が諸外国のデータを駆使しながら、日本独自のデータにあまり言及していないので、「へ〜外国ではそうなんだ」と参考になるものの、今一訴求力が乏しいのです。世界屈指の年間診療回数、医療の平等性への高い国民の期待、医療への経済的障壁の低さ、医療の完璧性への高い要求水準など、日本医療の特殊事情への言及が非常に薄いように思えました。改革の為の。。。という大上段に振りかぶらず、医療経済学的考え方の入門書、あるいは、ハンディーな医療版「西洋事情」と見るならば紛れもない良書と思えました。

目次

1章 忙しい読者のための総括
2章 比較による医療の相対的な位置付け―3つの分類別に(医療問題の3つの分類
コスト(医療費)の比較
アクセス(医療へのかかりやすさ)の比較
医療の質の比較)
3章 医療経済学に何ができるのか(誤解を解くための医療経済学の定義
医療と経済学の関係―妄信でも嫌悪でもない冷静な距離のとり方
専門大学院(プロフェッショナルスクール)で求められる教育)
4章 医療費高騰の犯人探し(疑われた5要因はいずれも犯人格としては小物―最大の黒幕は医療技術の進歩?
人口の高齢化が医療費に与えるインパクト ほか)
5章 改革へのロードマップ(制度改革の前に明らかにすべき価値基準
5つの効率の基準とその改善案 ほか)


今ある中では最高の医療分析 2006-12-18
医療崩壊が、日本人の品の低下による医療崩壊をセンセーショナルに示しているのに比して、日本の医療問題の、もっと根が深い本質を理論的に明らかとしている良書。今までに読んだ中では最も知りたいことが書いてある。医療を、経済で考えない時代も昔にはあったが、これだけ、高度化し、かつコストがかかるようになると、それを、どのように捉え、どのようなシステムを構築するか、しっかりとした分析とコンセンサスが必要なはずである。厚生白書の分析ははっきり言って極めてお粗末でナンセンス。将来的な医療政策を論じるのであれば、これくらいの解析の上に論じてほしいと切に願う。無意味な検診がどれだけの意義があるのか、無尽蔵な高額医療機器の乱立が、医療コストを押し上げている原因の一因でもあろう。彼のような分析が本邦のデータの上になされていけば、無意味な医療費抑制政策ではなく、介護保険まで念頭に入れたトータルな医療政策が立案できるであろう。保険母胎を、県に移管し、診療報酬も県に移管し、厚生官僚はまた天下り先を作るつもりなのであろうか。基本的な生活保障としての医療システム、介護システムを守るために、一人一人が、厳しい目を、立法府に向けて考える必要がある。医療問題を論じるのであれば是非読むべき本である。


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